『君と霧のラビリンス』に登場する男子生徒たちの日常を描くオリジナルSSの浅緋学園編をお届け!

浅緋学園

桃華雪夜
CV:平川大輔

近藤涼太
CV:武内駿輔

宇佐朱虎
CV:天﨑滉平

牧 総一郎
CV:蒼井翔太

春、浅緋学園──。

街路

近藤「そっちの準備はできたか?」

宇佐「カンペキや! あとは卵の色つけを残すのみですわ」

 「卵の色つけ? キャラ弁でも作るの?」

桃華「そういえば、総ちゃんは初めてだったね」

近藤「 浅緋学園には、イースターに大規模なエッグハントを行う伝統があってな。その為にイースターエッグというゆで卵に絵付けしたものを用意する必要があるんだ」

宇佐「 楽しいで〜。学園の敷地内ならどこに隠してもOK! クラス対抗で、イースターエッグの獲得ポイントを競うんや。いわゆる新しいクラスが仲良くなる為のオリエンテーション行事やな」

 「へぇ〜、楽しそう!」

宇佐「せやけど……問題がひとつ」

 「問題?」

近藤「その年に使用するイースターエッグは、生徒会執行部が作るという伝統があるんだ……」

宇佐「その数、ざっと100個!」

 「100個!?」

桃華「 浅緋学園の生徒会執行部って、本来なら10人〜20人くらいの組織だからね。今年は4人だけに絞っているけど」

近藤「10人、20人いても仕方が無いからな。先鋭だけいりゃ、仕事は回るだろ」

宇佐「こういう数稼がなあかん仕事は、めっちゃしんどいですけどね……」

ピピピピピ……。

タイマーの音が生徒会室に鳴り響く。

桃華「ゆで卵が出来上がったみたいだね」

近藤「まずは10個。ひとまずひとり2個ずつ色づけだな」

 「この絵の具を使えばいいの?」

宇佐「 ルールはないし、マジックでも何でも好きに使こてええで! 経験者的には下絵は鉛筆、仕上げは絵の具がオススメや」

 「うん、了解☆ ところで……ぼく、1番の下級生なんだけど」

近藤「それがどうかしたか?」

 「どうかしたって……えっと、ここではないのかな? その……」

宇佐「ないって何がや?」

桃華「何か必要なものがないってこと……?」

 「 そうじゃなくって、むしろ逆だよ。1年生はお前ひとりなんだから、卵の色つけくらいひとりでやってろよ。オラオラ、100個飾り付けるまで寝るんじゃねーぞ……みたいな、そういうことはないのって聞いてるんだよ☆」

宇佐「そんな妄想をキラキラした目で語れるのはお前だけやで……」

桃華「あはは」

近藤「 そんな意地の悪いことをする人間が生徒会執行部に選ばれる訳がないだろ。ここにいる以上、みんな仲間だ。仲間とは苦楽を共にするものだろう?」

宇佐「いいこと言いますねー……つーか」

 「そうか、ないのかー。ないんだねー……へー」

宇佐「何いじけてんねん!」

 「 だって、いくらがんばっても仕事を押しつけてくれたり、鞭で叩いて励ましてくれたり、ロウソクを垂らして蝋責めしてくれる未来は待ってないんでしょ!? そんなの、がんばりがいがないよ!!」

宇佐「 最初のはええ、次のもまだええということにしようやないか。せやけど……最後のはなんやねん! ロウソクて、アホか!!」

 「あーん、もっと言って〜☆」

近藤「 今更ながら、すごい1年が入ったな……」

桃華「 総ちゃんはいい子だよ。頑張り屋さんだし、手先は器用だし、ちょっと変わったところもおもしろいし」

近藤「はぁ……」

桃華「でも……」

宇佐「もうヤケクソや。あつあつゆで卵攻撃〜〜!」

 「あ〜ん、この熱さがたまんなーい☆」

カチ。

宇佐「ん? なんや、今の音は……」

 「……だろ」

宇佐「牧、今……何か言うたか?」

 「 熱いっつってんだろうが!! オレにゆでたての卵を押しつける理由はなんだ? 意味不明なことやってんじゃねぇぞ!」

桃華「時々、M属性の総ちゃんとS属性の総ちゃんが入れ替わっちゃうんだよね☆」

牧 「雪夜、総ちゃんって言うなっつってんだろ!」

桃華「あはは、地獄耳〜」

近藤「……だ」

宇佐「近藤先輩?」

近藤「 雪夜のことを呼び捨てにするヤツはどこのどいつだ? 後輩が会長である雪夜を呼び捨て? それは、縦社会である浅緋学園において許されることではないよなぁ?」

 「うっせー、涼太」

近藤「ああ?」

 「黙って卵の絵付けしろよ。100個もあるんだろ? さっさとやんねーと、終わんねーぞ」

近藤「……絵付け?」

毒気を抜かれた近藤が牧を見ると、彼は早々にイースターエッグの下絵に取りかかっていた。

宇佐「真面目なんか不真面目なんか……」

 「ああ? 誰が真面目だって?」

宇佐「はいはい、とりあえずイースターエッグ作りましょか」

桃華「何を描こうかなぁ」

近藤「イースターなんだし、うさぎはどうだ?」

桃華「うん、いいね。じゃあ……4羽のうさぎを描こうかな。僕たちをモチーフにしてさ」

宇佐「うわ、その卵プレミアつきそうやないですか!」

桃華「そうかな?」

宇佐「……にしても、牧って絵ぇ下手やなぁ。これ、何描いてんねん」

 「ああ? ケンカ売ってんのか!? 可愛い可愛いうさぎちゃんに決まってんだろ!」

宇佐「……てっきり、宇宙人やと」

近藤「俺も」

 「ああん?」

桃華「できた! こんな感じの下絵でどうかな?」

宇佐「ええんじゃな……い、です……んん?」

近藤「これは何だ?」

桃華「何って……さっき言わなかった? 僕たち4人をモチーフにしたうさぎの絵だよ」

近藤&宇佐(宇宙人かと思った……)

宇佐「近藤先輩は意外にも絵、うまいですね!」

近藤「 意外が余計だ。弟や妹に描いてやってたからな……。うまいという訳ではないが、書き慣れてはいるかも知れん」

宇佐「そういや、兄弟多いんでしたっけ」

近藤「下に5人いる」

宇佐「6人兄弟? そりゃ、お兄ちゃんの中のお兄ちゃんやなー」

桃華「白木院くんが聞いたらライバル心燃やしそうだね」

宇佐「へ? なんでです?」

桃華「ふふ、今にわかるよ」

 「おっしゃ。できた! 会心の出来!! これなら文句ないだろ」

宇佐「ピカソをマネて描いた……犬、であっとるか?」

 「うさぎだー!! イースターの本でも読んで出直してこい!」

桃華「あはは、賑やかだね」

近藤「賑やかすぎだろ」

桃華「このメンバーでイースターハントもできればいいのに、クラス対抗だから分かれちゃうね」

近藤「まあ、そうだな」

桃華「でも、涼太とは同じクラスで良かった。今年も、がんばろうね」

近藤「ああ。その前に……100個がんばって作らないとな」

桃華「あはは、がんばろうね」

世界観・シナリオ/さかもとゆかり(株式会社ラプター)