自分らしく生きていくための方法とは?

豪華声優陣の声で、ビジネス書や自己啓発書を楽しむことができる新感覚オーディオブックが、新レーベル“極上voiceメソッド”より配信中!

第1弾として2018年5月25日より配信中の『嫌われる勇気』に出演した細谷佳正さん井上和彦さんに、本作の魅力や収録中のエピソードをうかがいました。

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細谷佳正さん(青年役)、井上和彦さん(哲人役)

――オーディオブックの収録は、ふだんの声のお芝居とは異なる部分がありましたか?

細谷 ふだんの現場は自分の中にあるものを、台詞としてアウトプットすることのほうが多いんですけど、今回は台本という形に近くはありますが、アドラーの思想を知るための本だったし、台詞だったこともあって、青年の台詞を読みながら「なるほどね」と納得してしまうような、インプット的な感覚がありました。

井上 僕も哲人の台詞を読みながら、「勉強になるな」と感じていました。教えられる部分が結構ありましたね。今回スケジュールの関係で、細谷くんとは1回しかいっしょに収録できなかったんだけど、やっぱりいっしょに収録するのはいいですね。その後の収録でも、「きっと細谷くんはこうやって受けてくれるだろうな」と思いながら収録することができました。いっしょにやったときは(青年の)圧のすごさが、とにかく熱かったですね。そこまでくるか!? っていうくらい。

細谷 青年としては、哲人の語るアドラー心理学なんて絵空事なんだと、なんとか認めさせたいと思っていますからね。下巻にあたる『幸せになる勇気』の収録でごいっしょさせて頂いたんですけれど、『嫌われる勇気』で哲人の部屋を後にしてから1年後の話で「話が違うじゃないか!」と入ってくるところから始まるのがおもしろかったです(笑)。

井上 この青年、何も学んでないな! って思うよね(笑)。

――青年と哲人をそれぞれ演じるうえで、どんなことを心がけましたか?

細谷 耳からの情報しかないわけですから、いつものお芝居よりも“本を読んでいる”という感覚に近い形でやらせて頂きました。対話形式で書かれている本ですが、日常会話のようなしゃべりかたでやり過ぎてしまうと、耳で聴いたときにわかりにくくなってしまうので。なので“語り”というよりは、“本を読んでいる”っていう意識が、ふだんの収録よりも大きな割合を占めていたと思います。

井上 僕は、どうしてこの人が哲人になったのか、なぜアドラー心理学を勉強したのかを考えながら演じていました。哲人は、俗世間に生きているとなかなかない崇高さがあって、生きるとはどういうことなのかを真剣に考えている人。かといって偉そうに演じるのも変ですしね。“教えを伝える人”にならなければ! と思いながら演じていました。あと、青年がガツガツくるので、「いい加減わかってくれよ!」と思いながらも、イライラしないように気を付けました(笑)。

細谷 青年の物わかりを悪くしないと、話が成り立たないですからね。僕は青年をやっているときは常にイライラしてましたね(笑)。

井上 僕は「何を言ってきてもイライラしないぞ!」って思ってたよ。

細谷 僕は「何を言われてもイライラするぞ!」って思ってました(笑)。

――収録時のエピソードがあれば教えてください。

細谷 『幸せになる勇気』の中に、“人を褒めたり叱ったりする教育はよくない”という“賞罰教育”の教えが出てくるんですね。ディレクターさんも「本当にいい本ですね~」なんて言いながら収録していたんですが、僕が演じ終わると「いまの演技、素晴らしかったです!」って褒めてくれるんです(笑)。「これは……どうなんだろう……?」って思いました(笑)。

井上 僕もひとつひとつの教えに「なるほどな」と思いながら収録していましたね。収録では何も思わなかったことに、あとで読み返して気づいたこともありました。だから5年後、10年後に読んだり、このオーディオブックを聴いてもらったりすれば、また違った発見があるかもしれません。

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――『嫌われる勇気』の聴きどころはどこですか?

細谷 本の内容そのものです。僕らの仕事は他者の評価で成り立っているわけですが、他者からの評価を気にしないことについて書かれています。自分の仕事に人生をかけている方もいると思いますが、仕事=自分の生きかたではないと思うんです。俳優とか役者とか、声優とかは……“生きかた”みたいに思われがちですが、ただの職業の名前でしかない。その職業をする“ただの人間である自分”をいちばん大事に考えよう。そう思ったきっかけがこの本でした。 “賞罰教育”の考えかたを読んで、教育の最終目標が“自立”だと思えました。「自立するために、教えはあり、教育はあり、他者の言葉はある」という考えかたは、自分の指針にしようと決めたくらい強く影響を受けたので、共感して頂ける人がいたら、同じ読者としてうれしく思います。

井上 こういった本に、興味はあるけど読むのはちょっとな……っていうのが僕自身だったんです(笑)。今回お仕事を頂いて、「読んでよかった」と思いましたね。本で読むのが苦手な方は、僕らの声を聴いて頂ければと思います。オーディオブックを聴いたうえで、さらに本も読んで頂ければ、また違う発見もあるかもしれません。何ヵ月かこの作品に関わらせて頂いて、僕は生きるのがラクになったし、楽しくなりました。たくさんの人に読んで頂いて、新たな気づきを見つけて頂ければうれしいです。

――おふたりが『嫌われる勇気』からさまざまな感銘を受けたように、ご自身に大きな影響を与えたものや人との出会いを教えてください。

細谷 堀江貴文さんの本にはすごく影響を受けました。自分で考えることの重要性が書かれています。集団の安心感に埋もれ、思考を放棄してはいけないという考え方には影響を受けましたね。アフレコスタジオにいるときも、たくさんのキャストさんが一点に集中している様子を一歩引いて見てみるようにすることが増えました。

井上 僕はこの業界に入るきっかけになった永井一郎さんとの出会いですね。永井さんからはたくさんのことを教わりました。あの方は必ず自分で体験して、納得したものしか信じず、人から聴いただけで鵜呑みにすることは絶対しない。自分でこうだと確信を持つまでは、「ほかの可能性があるかもしれない」と全部自分で試すんです。それがお芝居にもすごく生きていて、役作りもひとつではなくいろんな可能性を用意したうえで、ひねり出す。その姿から、「自分で信じられるようになるまでは、人の意見を信じるのではなく、しっかりと見なさい」という考えかたを教わりました。

――この『嫌われる勇気』を、どんな方に聴いてほしいですか?

細谷 人の顔色を気にしてしまう人ですね。そういう人って多いと思うんです。例えば誰かがAっていう意見を出して、10人中9人がそれに賛成したら、自分はBだと言い出せないことがあると思うんです。本当は自分の意見なんだから言っても構わないのに、ついつい相手の機嫌を損ねるのでは? と先回りして考えてしまう。自分は今回関わらせて頂いて、自分が常にベストである選択を、自分でいくほうがいいんだなと思いました。もしかしたら相手の機嫌を損ねるかもしれないし、そこで切れてしまう縁がもあるかもしれないとしても、自分がそう思ったから言うこと。本には“課題の分離”と書かれていますが、他者の感情を自分で操ることはできないから、自分のベストをやり続けていくしかないという言葉が印象的でした。去年、休業する前までは、僕自身その傾向がすごく強かったんです。声優は、ディレクターがOKを出しても、本当にOKなのか疑ってしまうものなんです。OKだと満足してしまうと、「本当にそれでOKだと思ってたら、進歩がないぞ」って言われちゃう世界。だから他人の言うことにすごく敏感になっていたんです。果たして他人が望む自分になれているのだろうか? って。でもそれをやっていると、自分が自分の人生の主役になれないとアドラーは言います。いまの自分にとって、背骨になるような考えかたでした。だから他人の顔色を気にし過ぎて疲れている人には、ぜひ読んで頂きたいですね。自分らしく生きていくための方法や言葉が書かれています。

井上 自分で自分を認められずにいる人、自分に言い訳をするのがクセになっている人もぜひ読んでもらいたいですね。自分が理想とする自分に向かって進んでいくためのヒントが、散りばめられています。僕たちの声を聴いて、そう感じてもらえたら幸せですね。

細谷佳正さん・井上和彦さん×『嫌われる勇気』作品概要

【ガイドイメージ】血気盛んだが悩み多き青年と、知的かつ穏やかに彼と語り合う老紳士。
【著者】岸見一郎、 古賀史健
【出版社】ダイヤモンド社
【販売価格】前:1836円[税込]、後:1620円[税込]
【配信サイト】オーディオブック配信サービス“audiobook.jp”

※本作は、原作ままの音声化となっております。
※後編は6月29日配信開始予定です。

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