とにかく原作見て、アニメを見てください

2018年12月に舞台「-壊れた水槽-」が上演され、2019年にTVアニメの放送や舞台「-虹のある場所-」の上演を控える『pet』

三宅乱丈氏原作の本作は、“イメージ”という特殊能力を使い、人の記憶を“会社”のために変えることを仕事とする主人公・ヒロキと司が、運命に翻弄されていく姿が描かれます。

舞台『「pet」-壊れた水槽-』のDVDがリリースされたことを記念して、舞台・アニメの両方でヒロキを演じる植田圭輔さんと、アニメ版で司を演じる谷山紀章さん対談インタビューをお届けします!

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ペットという概念に翻弄される、不器用な人間たち

――2018年12月に植田さんが主演の本作の舞台「-壊れた水槽-」が上演されましたが、舞台を終えられてのご感想をお願いします。

植田 公演が無事に終わって、しかも面白かったという声もたくさん頂き正直ホッとしています。作品の内容が初見だとちょっと難しく、それを観てくださっているお客さんに伝え、その上で感情移入をしてもらわなきゃいけないというのがあり、演者もスタッフもそこにすごく気を使っていました。ですが今回の舞台はすごくご好評を頂いたので、ひとまずアニメにつなげられたかなと安心しました。

――『pet』という作品やご自身が演じるキャラクターの魅力はどこにあると思いますか?

植田 僕の演じるヒロキは、喜怒哀楽のお化けだなって思っていて。舞台をやっていても改めて思ったんですが、嬉しいときは嬉しいし、不安な要素があったりしたらすぐ気持ちが落ちたり怒鳴ったりしてしまう。すぐ周りに左右され、人の感情に引っ張られちゃうんです。でもその分、役者としては非常に演じがいがある役だなという印象です。

――谷山さんはいかがですか?

谷山 ひとことでは言えないですよね。個人的に本当に思い入れが強い作品ですから。作品の魅力と言ったら、“三宅乱丈先生の才能がスパークしている”という点に尽きると思います。最初から三宅先生は「すごい人だな!」と思って、デビュー作からいちファンとして読ませてもらっています。僕の演じる司というキャラクターは、“ペット”という概念にいちばん運命を翻弄されている人間だと思いますね。キャラクターはそれぞれこの“ペット”というものに翻弄されてはいるんですけど、本当に司は不憫というか。対外的にはちゃんと優しげな外面もできるし、本編ではあまり描かれてませんが、おそらく女性の扱いかたなどにも長けているだろうし。でもそのじつ、内面はいちばんドロッとしていますよね。一応『pet』のなかでは悪役みたいに扱われていますが、全然一面的な悪じゃないというか、共感しようとするとすごく苦しいキャラクターです。

――お互いが演じているキャラクターについての印象はいかがですか?

植田 司はひとことで「こうなんですよね」と言うのが難しいですが、第一印象は「ハイパー賢いな!」と。司はこれまで置かれた環境の中で「賢くなったんだな」と思いましたね。ヒロキとは真逆だなという印象はあります。この作品のキャラクターは全員そうですが、報われない愛というか、不器用な人間たちだなあと思います。

谷山 僕の演じている司が“ヤマ親”(※)なので、ヒロキは司のペットということになるんですが、結局司は見えているものや追いかけているものが林さんなので、ヒロキはそこにつながるための手段でしかないというのが、このペットシステムの罪深いところですよね。司はヒロキに愛情を注いでいるようで、じつは自分の願望をかなえるためのツールでしかないというところに、ゆがんだ愛情を感じるんです。でも、ヒロキは司が“自分の言うことを聞いてくれる唯一の存在”だと思っているから、ある意味、信頼や信用しているというか……。お互いに違う意味で“離れられない存在”なんだと思います。

――ご自身が演じられるキャラクターに、共感できるところや尊敬できると思うところはありますか?

谷山 司と同じで、僕自身も独占欲が異常に強いってところはなくもないんだけど……。

植田 そうなんですか?

谷山 誰しもあるんじゃないかな? 人でも物でも、その対象に本気で情熱を傾けてしまったら。自分だけの、自分がいちばんという気持ちはわからなくもないですね。尊敬できるところは、さっき圭ちゃんも言っていたように、司は結果的に賢くなってしまったヤツなんだけど、地頭がいいんだろうなって。僕は複雑なことになるとすぐ鈍感力を働かせてしまって、難しい話になると立ち入らないようにしちゃうんだけど。司は生きてきた環境ゆえに、“そこから先”に行かざるをえなかったから賢くなったんですよね。司って人狼ゲームとか強そうじゃん。

植田 間違いないですね。

谷山 僕、人狼弱いんですよ(笑)。自分に持っていないものを持っている人を見ると憧れるので、司の賢いところは「こんなふうにはできないな」と思いますし、尊敬できるところかな。

植田 ヒロキは精神的に不安定なキャラクターなので、共感はなかなか難しいですね。

谷山 そうだね、強烈だよね。

植田 強烈なんですよね。尊敬するところは、とにかく自分に素直なところ。大人になると“そうしちゃいけない”瞬間があったりしますが、ヒロキは「関係ないぜ」ってやってみて、それはダメだよと言われたらすぐ反省するタイプ。自分の意見をはっきり言うけど、人の意見も聞き入れるところは尊敬できますし、見習いたいなと思います。

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満場一致のいちばん好きなキャラクターとは

――では、演じられているキャラクターのいちばん表現したいところや、大切にしていきたいところはどこですか?

植田 ヒロキは基本怒っているか泣いているか、めっちゃ喜んでいるかなので、そういうちょっと極端な表現を大切にしたいです。あとは、舞台前編のラストでヒロキが司に「ペットって何?」と聞くシーンがあったんですけど、せっかく司を紀章さんが演じてくださるので、アニメでも演じたいです。思い入れも強いので、絶対やりたいです!

谷山 司はある意味嫌われ役なんですよ。だから、観ている人にとってもいい悪役になりたいかな。「司はやっぱりかわいそうなやつだったんだな」とほんのちょっとでも思ってくれてもいいんだけど。基本の役割的には悪役的な見られかたでもいいなと思います。彼に共感しすぎると、こっちも闇落ちしそうだからきついんだけど(笑)、ギリギリのところまで近づいて司を表現できればいいなと思っています。林さんへの愛情の深さとか、ちょっとしたときに垣間見える狂気とか、人物の深みみたいなものが伝わればいいかな。

――おふたりが司とヒロキ以外で印象に残っているキャラクターを教えてください。

谷山 僕は林と悟かな。悟はバランス感覚がうらやましいなと思います。でも、役として司に入っているから林と悟が気になるというのがあるのかもしれない。それを取っ払って、いち読者としては桂木が魅力的だと思います。バックボーンにあるストーリーもいいし。いまの彼は物語のなかでもイジられているキャラクターですが、そもそも素の桂木って男前ですよね。大森貴弘監督も、最初の話し合いのときに「僕も、桂木好きなんですけどね」って言っていました。桂木にはある意味ミスリードみたいなところがあって、俗っぽい言いかたをするとオイしいキャラ。もちろん登場キャラクターは全員好きなんですけど、桂木はとくに好きです。

植田 僕も桂木が好きですね。カブっちゃいますが、キャストは全員そう言うと思います。ものすごく人間らしいので、桂木いいなって思います。

谷山 満場一致で桂木ですね。

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ふたりがアニメで演じたいシーンは?

――アニメで演じてみたい原作のシーンを教えてください。

谷山 僕は、司と桂木がふたりで林を見張っているシーンかな。物語の序盤、会社でのふたりの関係をミスリードしてきて、司はヒロキの前では「桂木のほうが立場が上だから逆らえない」と言っているけど、じつは司のほうが桂木の上司だった……みたいな。あのシーンの司の変わりようは演じてみたいですね。あとは、そこからの“司対林さん”。司が自分の“ヤマ”の中にわざと林を招き入れてからのサイキックバトルは、ぜひ演じてみたいシーンです。

植田 原作だと1巻になりますが、水槽屋に来た悟にヒロキがあたり散らすところは、オーディションのときのセリフだったんです。だから思い入れがひとしお強く、アニメでも演じたいです。あとは「俺から記憶を抜いてくれよ、全部なかったことにしてくれよ」という、クライマックスのセリフまでしっかりたどり着きたいです。

――ご自身が出ていないところで、アニメで観てみたいシーンはどこですか?

谷山 マフィアの大ボスのところに、社長とロンがメイリンを連れて裸で乗り込むシーンですね。謀反というか、裏切りのシーンというか、革命のシーンですね。あれがどんなふうにアニメで表現されるのかという。大森監督が原作のガチファンなので、絶対におもしろくかっこよくやってくれると思うんですよ。司が出ているところ以外だと、あのシーンは観たいかな。というかファンとしては、全部観たいんだよね(笑)。

植田 僕は先ほど紀章さんが演じてみたいとおっしゃっていた、司と林さんのバトルシーンです。あそこは僕もすごく楽しみですね。

谷山 この作品はどのシーンも全部重要だよね。でも、やっぱり病院のシーンは大変というか、ヒロキが潰れた林を見つけるあたりなんてヒロキの独壇場でしょ? やりごたえありそうだよね。

植田 完全にそうですね。このシーンは舞台でも演じましたが、舞台上でも延々とひとりでしゃべっていました。ヒロキが林のもとにたどりついて、林の記憶の中でいろいろなことを知って……。アニメでもがんばります!

――本作が映像化されるうえで楽しみにしているところはどんなところですか?

谷山 僕は大ファンの作品に関わってしまっただけに、楽しみより不安のほうが強いです。ただ、いちファンとしてアニメ化を受け入れた身として言うと、期待するのはやっぱり“どれだけ原作に忠実か”というところ。いまのところ、アニメの脚本も素晴らしいのでワクワクしています。早く観たいですね。

植田 ふつうの……という言いかたがあっているかわからないですが、“ふつうのアニメ”ではなかなか観られないような映像が観られると思います。例えば、“イメージ”で記憶の中に入ったときの描写など、自分の想像を超えてどんな景色が見れるか楽しみです。時を経ていまアニメ化する意味を、僕たちも本編を見たときにようやく感じられるのかなと。とくに、司と林さんのバトルシーンは、すごく繊細に表現されると思うので楽しみにしています。

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植田さんと谷山さんのお互いの印象

――おふたりは『pet』で初共演ですが、お互いの印象はいかがですか?

植田 僕からすれば、紀章さんはこうしてお会いするはるか前から、知ってる方です。

谷山 そんなになんだ(笑)。俺、大ベテランみたいじゃん。

植田 「あっ、紀章さんの声だ」って、iPodからランダムで流れてくるくらい(笑)。とある作品の舞台版で、紀章さんが演じられた役を命かけてやらせて頂いているので。

谷山 ご縁がありますな。

植田 そうなんですよ。すごくご縁があって、紀章さんが演じられている役を舞台でやらせて頂くことも多くて。あと、紀章さんがボーカルをしているGRANRODEOの楽曲が好きなんです。

谷山 そうなの? ありがとう、ライブ来てね!

植田 行きたいです! だから、僕からするとすごい人なんですよ。それなのにすごい気さくな方で。『pet』の制作発表で初めてお会いしたときも、「よろしく」って言ってぱっと手を出してくれたんです。僕のイメージしている“谷山紀章さん”のままだったので、ありがとうございますという感じでしたね。

――谷山さんは植田さんにはどのような印象をお持ちですか?

谷山 人懐っこくてかわいらしいルックスを、どう見られているのかをわかっていて最大限に活かしているんじゃないかなって(笑)。とくに先輩・年上タラシみたいなところがあるよね。年下より年上に行ったほうがモテるって、たぶん自分でわかっているだろうし。風貌を利用しているところがあると思うんですよ(笑)。

植田 そうですね(笑)。

谷山 この愛くるしいルックスで、ちょっとズルさもありながらという。でも、割と対外的には素直な自分をさらけ出しているところもあるから、役者さんだなって思いますね。すごく魅力的な人物だと思います。まだお酒の場で話したことがないので、機会があれば楽しみにしたいです。

――ちなみに本作ではヒロキが金魚、司が水のようにそれぞれ“イメージ”を持っていますが、ご自身がイメージを持つとしたらどんなものがいいですか?

谷山 俺はなんだろうな。音符かな? かっこいいよね(笑)。

植田 かっこいいですね(笑)

谷山 ト音記号とか。あとなんだろう。虫? 鳥? 鳥もかっこいいな。小型の飛行機とか、そういうものでもいいかな。俺は“風”にまつわりそうな気がするんだよね。でも、飛行機に乗るのは嫌いだからさ(笑)。

植田 でも逆にトラウマのあるものとか、嫌いなものになる可能性もありますよね。

谷山 そうそう。飛行機やスペースシャトルそのものというよりは、小さいサイズの模型やプラモデルが飛んでそれに自分が乗っているみたいなイメージ。難しいな、圭ちゃんは何がいい?

植田 なんでしょうね? 作品内に出てきているそれぞれのイメージは、水や金魚とか「そうだよね」って思うものばかりなので。現代的なものだとすると、携帯の電波とか光回線はめちゃくちゃ強い能力者だなって思います。

谷山 光はずるいね。

植田 光ずるいですね。しかも響きもかっこいいので、光でお願いします!

谷山 じゃあやっぱり俺は音符で! かっこよく思われたい(笑)。

――最後に、アニメや舞台後編を楽しみにしている読者にメッセージをお願いします。

植田 僕は舞台の方にも関わらせて頂いて、2019年はアニメ放送や舞台「-虹のある場所-」の上演が終わるまで、ほぼ1年間つねにヒロキが心にあるなかで過ごすことになります。この作品は、好きがゆえに見なくてもいいものを見てしまったり、見たい景色にたどり着かなかったり、人を想うことや愛の本質が描かれていたり、そういうものを感じて頂けるのがポイントだと思います。結局、人間同士のハートの話だと思うので、「ちょっと難しそうだな」という先入観を取り除いて見て頂ければ、きっとものすごく楽しんで頂けると思います。

谷山 僕は単純に作品のファンだから、僕が携わっていなくても全力で応援するつもりでしたし、関わらせて頂くことができて本当に無上の光栄、ラッキーだと思っているんです。やるからにはスタッフ、キャストの全員で全力で作っていきます。監督はベテランの方ですし、原作の“ガチ勢”なので、絶対いいものになると確信しています。まずは原作を読んで、そしてアニメを観てほしいというのが僕の素直なメッセージですね。アニメ化は『pet』という作品を知ってもらえるいいきっかけだと思います。コンプライアンスの高まっている時代に、きわどいシーン、グロいシーン、ひょっとしたらトラウマになってしまうようなシーンがあるかもしれないですが、そこが作品のギリギリの魅力なので。三宅乱丈という才能、『pet』という作品のすごさを知ってほしいです。とにかく原作見て、アニメを見てください!

 

※ヤマ親:自分の一番大切な感覚や感情を「ペット」に分け与えた人物。「ペット」にとっては、血の繋がった家族よりも深い信頼を寄せることから“ヤマ親”と呼ばれる。

 

『pet』作品概要

【ストーリー】
分かち合う記憶、奪い合う心
人の脳内に潜り込み、記憶を操る能力を持つ者達がいた。
彼らのその力は、事件の揉み消しや暗殺など、裏の世界で利用されてきた。
人の精神を壊すほどのその力は、同時に彼ら自身の心を蝕(むしば)んだ。
彼らはお互いを鎖で縛り付け合うように、脆く危うい心を守った。
彼らは恐れと蔑みからpet(ペット)と呼ばれた。

TVアニメ版

【タイトル】TVアニメ「pet」
【CAST】
ヒロキ:植田圭輔/司:谷山紀章/悟:小野友樹/林:加瀬康之 ほか
【スタッフ】
原作:三宅乱丈『ペット リマスター・エディション』(ビームコミックス/KADOKAWA刊)/監督:大森貴弘/シリーズ構成:村井さだゆき/キャラクターデザイン:羽山淳一/制作:ジェノスタジオ/製作:ツインエンジン
【放送情報】
2019年放送予定

舞台版

【公演名】舞台「pet」-虹のある場所-
【公演期間】2019年7月29日(月)より ※公演日程は近日公開予定
【公演会場】神田明神ホール
【原作】三宅乱丈『ペット リマスター・エディション』(ビームコミックス/KADOKAWA刊)
【協力】TVアニメ「pet」
【総合監修】なるせゆうせい
【演出・脚本】伊勢直弘
【制作】オフィスインベーダー
【製作】舞台「pet」製作委員会
【キャスト】
ヒロキ:植田圭輔、司:桑野晃輔、悟:谷佳樹、林:萩野崇、桂木:君沢ユウキ、ロン:伊勢大貴、ジン:あまりかなり
※舞台『「pet」-壊れた水槽-』のDVDは発売中(価格は6300円[税込])。

イベント概要

5/4(土・祝)「pet」アニメ&舞台キャスト登壇イベント開催!

【イベント名】「pet」Wアクターズパーティ
【開催日】2019年5月4日(土・祝)
昼の部/15:00~
夜の部/17:00~
(全2公演予定)※開催時間は変更となる場合があります。
【会場】ユナイテッド・シネマ アクアシティお台場
【出演者】
植田圭輔、谷山紀章、小野友樹、加瀬康之、桑野晃輔、谷佳樹、萩野崇、君沢ユウキ
【チケット料金】4800円[税込]
プレイガイド:ローチケ Lコード:34160

一般発売:4月20日(土)12:00~
インターネット予約:http://l-tike.com/(パソコン・携帯)
※ご購入いただくには会員登録(無料)が必要です。
店頭販売:ローソン・ミニストップ店内Loppiで直接購入いただけます。
※出演者・イベント内容は予告無く変更になる場合がございます。

(C)三宅乱丈・KADOKAWA/ツインエンジン
(C)三宅乱丈・KADOKAWA /舞台「pet」製作委員会