朗読・音楽・文楽で紡ぐ“三位一体”の物語

2019年10月5日・6日、舞浜アンフィシアターにて新感覚・音楽朗読劇『SOUND THEATRE×火色の文楽』全2公演が上演されました。

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劇中音楽の生演奏に加え、本作の題材にもなっている“人形浄瑠璃・文楽”の上演。

そして朗読陣に、天﨑滉平さん(迫 弓矢役)、熊谷健太郎さん(柳川 弦治役)、市川太一さん(大楠 柑太役)のフレッシュな若手声優に加え、日笠陽子さん(入江 湊役)、てらそままさきさん(藤竹潮路太夫役)、井上和彦さん(松永珠市役)、秋元羊介さん(蓮本光臣役)、高橋広樹さん(菊元千鳥太夫役)、植田佳奈さん(末広 蕗役)という超豪華な顔ぶれが集結。

観る者の五感すべてを刺激する新感覚な舞台を創りあげました。

ここでは、その本公演に先駆けて行われた公開ゲネプロの模様をお届けします。

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第一幕──“文楽”との出会い。劇中“文楽”の演出にも注目を!

暗転した中に静やかにピアノと弦楽器の音が鳴り響き、舞台は幕を上げます。

まずは、怪我によりバレエの夢を絶たれてしまったこの物語の主人公、迫 弓矢(天﨑滉平)が“文楽”と出会う少し前の1シーン。

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天﨑滉平さん
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▲日笠陽子さん

「バレエの星」と呼ばれた弓矢の噂話をする男女の声。動画から聞こえてくる実況の声。雑誌を見ながら世間話をする(後の)師匠たち。
それぞれの会話が、いま弓矢が置かれている状況を想像させます。

そして弓矢は、太夫を祖父にもつ幼馴染・入江 湊(日笠陽子)の誘いで、初めて“文楽”を観ることに。

拍子木が鳴らされ、会場に三味線の音が響くと、ステージに設けられたセットが回転し、文楽座の太夫と三味線が登場します。

そして、円形ステージのせり上がりからは、煌びやかな人形とその使い手が登場。劇中“文楽”が開演しました。

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演目は『本朝廿四孝(ほんちょうにじゅうしこう)』

三味線の音楽と太夫が語る物語にあわせて、人形使いがあやつる人形が、ステージを妖艶に煌びやかに舞います。

最初こそ“退屈なもの”として、あくびまじりの弓矢でしたが、次第に“文楽”に魅了されていきます。

「翼が欲しい」と請い願う姫の姿に、バレエで飛べなくなった自身の姿を重ねて、「どこまでもたかく、飛んでくれ!」と願う弓矢の声。
その声にあわせて切なく響く音楽と、ステージへの照明が共鳴して、視覚的にも聴覚的にも印象的なシーンを創り上げます。

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▲てらそままさきさん
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▲井上和彦さん
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▲秋元羊介さん

そして、後の師匠である湊の祖父・藤竹潮路太夫(てらそままさき)との出会いによって、閉ざされていた弓矢の心に火が灯ります。

師匠たちや三味線弾きの友人・柳川弦治(熊谷健太郎)からの言葉によって、バレエへの未練が絶ち切れていないことに気が付き、自らを見つめ直し、克服し、新たに手に入れた表現“文楽”に打ち込む弓矢。

さらに、人形使いを志す大楠柑太(市川太一)との出会いもあり、弓矢の世界が少しずつ開かれていきます。

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▲熊谷健太郎さん
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▲市川太一さん

バレエの技術を磨くために、幼いころから感情に蓋をしてきた弓矢が、一連の出会いから次第に変化していくさまは、第一幕の見どころのひとつ!

物語の中で、徐々に感情豊かになる弓矢の心情にあわせて、演じる天﨑さんの声も表情豊かになり、音楽やステージ演出も相まって、少しずつ物語の世界が広がる感覚が感じられます。

そして、弓矢と湊の関係にも少しずつ変化が。
付かず離れずの幼馴染だったふたりの想いが噛みあわず、すれ違う様子は、切なくもあり甘酸っぱくもあり……。

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そんな第一幕は、“文楽”に打ち込みながらも、いろいろなことに迷い悩む等身大の男子高校生の姿が、とても丁寧に描かれていました。

第二幕──観る者の心を震わるシーンの連続! 第一幕の伏線がつながる快感も

第二幕の始まりは、音楽陣の演奏からスタート!

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ピアノと弦楽器、鳴り物、そして三味線で奏でられる、心に燃え上がる炎のように激しく情熱的な音楽が、第二幕への期待を高めます。
さらに“文楽”の三味線も加わる瞬間は、音楽に詳しくない人でも鳥肌もの!

生で聴く音楽の圧倒的な存在感が、これでもかと堪能できる瞬間です。

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そして、朗読陣が登場。この第二幕より、天﨑さん・熊谷さん・市川さんの衣装も和装へと変わり、物語はいよいよ佳境へと入っていきます。

恋に身をやつした娘を演じるため、“会いたい心”を探し求めて苦悩する弓矢。
自分の心と向き合ううちに、幼いころに別れ、心の奥底に仕舞い込んでしまっていた“父親”の存在に気が付きます。

「逢いたかった…」

と、“文楽”の節に重ねた弓矢の台詞が、切なくステージに響きます。

そして、物語の舞台は、6年後に──。

弓矢・弦治・柑太は大人になり、私生活が少しずつ変化しつつも、それぞれに“文楽”に打ち込んでいます。
弓矢は“藤竹弓太夫”を名乗って“文楽”の舞台にのぼるようになるも、師匠や兄弟子の背中はまだまだ遠く……。

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そんな折、入院時に同室だった少年・翼(植田佳奈)との再会。
そして、かつて弓矢と同じように潮路太夫に弟子入りしていた兄弟子の存在を知ることになります。

潮路太夫(てらそままさき)と珠市師匠(井上和彦)から語られる過去の情景。
また、蕗さん(植田佳奈)が明かす千鳥太夫(高橋広樹)の過去。

遠い背中と思っていた師匠や兄弟子、それぞれの人生が垣間見えるシーンは、その劇伴も相まってとても美しく切なく、聴く者の涙を誘います。

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▲高橋広樹さん
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▲植田佳奈さん

第二幕後半は、それまで群像劇的に流れていた登場人物の過去と今が、次々と繋がり重なり合い、まるで大河のように流れ込み、観る者の心を震わるシーンの連続。

そしてクライマックス。
さまざまな出会いと経験を経て、心を開き受け止めてきた弓矢が紡ぐ“文楽”の歌が、弦治・柑太・千鳥太夫、そして湊の心を解き放ちます!

『俺たちの声は、音は、技は、灯(ともしび)なんや──!』

苦楽を共にしてきた弓矢・弦治・柑太。
天﨑さん・熊谷さん・市川さんの声が重なる力強い一節。

パッと目の前が開けたような解放感のあるシーンに、音楽と照明が重なり、ステージに紙ふぶきが舞います。
それは、必死にもがく日々の中で、ひとつの答えを見つけた彼らを祝福しているようでもあり、その明るい未来を暗示しているようでもあり。

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たった二幕の舞台の中に、登場人物それぞれの人生が描かれた濃厚な時間は、凛々しく清々しいシーンで幕を下ろしました。

朗読陣の“兼ね役”にも注目!

朗読劇の楽しみ方は、物語を追うだけに非ず!
役者好きならば、劇中に登場する本役以外、いわゆる“兼ね役”も注目したいところ。

本作では、弦治役・熊谷さんが「潮路太夫のかつての弟子・麻虎」を、千鳥太夫役・高橋さんが「兄弟子・巴太夫」を、珠市師匠役・井上和彦さんが「麻虎(オウム)」を演じるなど、随所でさまざまな“兼ね役”が登場します。

その度に、まるで別人がステージに立っているような錯覚になるほどの演技に驚かされることに!

ぜひ、何度も聴きかえして、その妙演をご堪能ください!

⇒ 劇中の登場人物は公式サイトでチェック!

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公演概要

【タイトル】SOUND THEATRE × 火色の文楽
【会  場】舞浜アンフィシアター(⇒公式サイト)
【公演日時】
2019年10月5日(土)  開場 17:15 / 開演 18:00
2019年10月6日(日)  開場 11:15 / 開演 12:00

【原  作】北駒生「火色の文楽」(ゼノンコミックス/ノース・スターズ・ピクチャーズ)
【脚本・演 出】キタムラトシヒロ
【音楽監督】土屋雄作
【文楽協力】公益財団法人文楽協会
【主  催】サウンドシアター事務局
【制  作】アハバ クリエイティヴ パーティー

<朗読>
迫 弓矢:天﨑滉平
入江 湊:日笠陽子
柳川 弦治:熊谷健太郎
大楠 柑太:市川太一
藤竹潮路太夫:てらそままさき
松永珠市:井上和彦
蓮本光臣:秋元羊介
菊元千鳥太夫:高橋広樹
末広 蕗:植田佳奈

<演奏>
ヴァイオリン:土屋雄作
ヴィオラ:田中詩織
チェロ:井上真那美
ピアノ:廣瀬みちる
津軽三味線:藤井黎元
太鼓・鳴り物:美鵬直三朗

<文楽>
太夫:豊竹希太夫
三味線:鶴澤友之助
人形:吉田一輔
人形:吉田玉翔
人形:吉田簑悠

©北駒生/NSP 2017
©SOUND THEATRE / 写真:吉田宗彦