ルビーパーティーの今後の展開のヒントも!
“乙女のための最強ゲーム誌”をキャッチコピーに、2018年3月に16周年を迎えた女性向けゲーム誌『B’s-LOG』。このたびWebサイトをリニューアルし、“B’s-LOG.com”として生まれ変わったことを記念して、女性向け恋愛ゲーム――通称“乙女ゲーム”の草分け的存在である“ネオロマンス”シリーズでおなじみの、コーエーテクモゲームス・ルビーパーティーブランドのキーマンに直撃インタビュー!
後編では、女性向けゲームの市場全体の変化や今後のルビーパーティーの展開、さらには“人気が出るキャラクター”の変化など、さらにディープなインタビューをお届けします☆
――襟川さんは、90年代からいまにいたる女性向けゲーム市場の変化をどうご覧になっていますか?
襟川 『アンジェリーク』を発売した頃、女性向けゲームはどちらかというとマイナーなジャンルでしたが、2000年に入ってからの10年間で家庭用の女性向けゲームが各社さんから続々と発売されて、10万本以上売れるヒット作も多数生まれました。その頃からやっと、ゲーム業界でも女性向けゲームが一般的になったと思います。そして2015年頃からは、女性向けのアプリゲームが続々とヒットを飛ばしました。専用のゲーム機を持っていなくても女性向けゲームがプレイできるようになったので、ユーザー数が爆発的に増えて、女性向けゲーム市場は一気に拡大しました。
それにともなって、いままでは女性向けゲーム=恋愛ゲームがメインだったものが、ユーザーのキャラクターに対する“好きの形”の多様性を反映するように、恋愛だけではなく、キャラクター自身を応援したり指揮したり育成する、キャラクター支援型のゲームが増えてきたように思います。
――“好きの形”の多様性とはどのようなものでしょうか。
襟川 キャラクターと恋愛したい人もいれば応援したい人もいるし、キャラクター同士の関係性を楽しみたい人もいて、好きの形はさまざまです。いまですと、キャラクター育成のアプリゲームがとても人気ですよね。女性向けゲームの幅も広がりましたし、これからますますファン層も広がっていくのではないかなと思っています。
――そんな現在の市場に対して、ルビーパーティーはどうアプローチしていきたいと考えていらっしゃいますか? 現状、コンシューマー向けタイトルがメインとなっていますが。
襟川 もちろんコンシューマー向けゲームはこれからも続けていきたいのですが、アプリ市場にも乗り出していきたいという気持ちはずっとあります。また、発表済みの『金色のコルダ オクターヴ』については、アプリとは別の形で、さらに豪華にお届けできる形になりました。現在準備を進めているので、続報をお待ちください。それから、コンシューマー向けは現在PS Vitaが中心なのですが、ハードはほかにもいろいろありますので、PS Vita以外にも乗り出していく予定です。あとは海外ですね。2016年に『金色のコルダ4』を台湾で発売しましたが、海外、とくにアジアでルビーパーティーブランドを広げることにもさらに力を入れていきたいなと考えています。
――逆に、家庭用ゲーム機でゲームをプレイする魅力というのはどこにあるとお考えですか?
襟川 コンシューマーの女性向けゲームがアプリゲームともっとも違うところは、没入感を削がれずに一本筋の通ったストーリーをじっくり楽しめることではないでしょうか。アプリはどうしても短いストーリーの連続になってしまいますので、重厚なストーリーや世界観を心行くまで楽しめるのは家庭用ゲームならではだと思います。
――先ほどもお話にあったように、いわゆる乙女ゲームのユーザーと、アプリゲームのユーザーはゲームの楽しみかたが違う印象を受けます。アプリゲームのユーザーにコンシューマー向けの乙女ゲームを遊んでもらうにはどうすればいいのでしょうか。
襟川 アプリの場合、すごくキレイなカード絵や短いストーリーでキャラクターの魅力や世界観を伝えていかなければいけませんよね。大事なのはわかりやすさとインパクトです。そこからさらに踏み込んで、“このゲームの世界観をもっとじっくり楽しみたい”ですとか、“キャラクターの人となりをもっと深く知りたい”という方々にコンシューマー向けゲームを遊んで頂けたらいいのかなと思っています。
――コーエーテクモゲームスのタイトルで言うと、『ときめきレストラン☆☆☆』も携帯用ゲームからコンシューマー向けタイトルが発売されましたね。
襟川 そうですね。アプリやライブとはまた違った側面からアイドルたちの魅力をお伝えできたのではないかと思います。現在はアプリのほうが市場は大きいので、アプリのファンを家庭用につなげる、あるいは家庭用ゲームのファンをさらに広げるためにアプリを出す、という相互関係をうまく作っていけたらと思っています。
※『ときめきレストラン☆☆☆』とは
レストランを運営しながら、そこに訪れる2組の男性アイドルグループと交流する女性向け恋愛アプリゲーム。レストラン経営をして、定期的に更新される期間限定のクエストに挑みレシピや家具を集めたり、食事に来たアイドルとのイベントを楽しむことができます。2013年3月にサービスを開始以来、2014年8月に株式会社コナミデジタルエンタテインメントよりライセンス許諾を受け、株式会社コーエーテクモゲームスが運営。
2013年3月に配信を開始したアプリを軸に、“6人のアイドルたちは実在する”という演出で幅広いメディアミックス展開も行なわれ、CDや書籍、グッズ、遊園施設やカフェとのコラボレーションやVRライブなど、多岐にわたる活動が話題を博しています。
――これからの乙女ゲームはどのように進化していくとお考えですか?
襟川 ARとVRとAIという最新の技術を使った女性向けのゲームがこれから少しずつ増えてくるのかなと思っています。『ときめきレストラン☆☆☆』では、バーチャルライブを横浜のDMM VR THERTERで行っていますが、好きなキャラクターにリアルで会える感動体験は、ゲームの中でキャラクターと関係性を持つこととはまた違ったものに感じると思います。もうひとつ『ときめきレストラン☆☆☆』で言えば、VR筐体の“VRセンス”で『3 Majesty × X.I.P. DREAM☆LIVE』を稼動していますが、ライブよりもさらに近くでキャラクターと接することができます。目の前に、大好きなキャラクターとその世界観が広がるわけです。もっと進化すると、コントローラーを持たずにキャラクターと対面して話したり、AIを使ってキャラクター自身が成長するような、そういったゲームがそのうちできるのではないかなとも思っています。まだまだ先になるかな? というところではありますが。
――ARやVRという言葉が一般的にはなりましたが、女性向けコンテンツはまだ少ないですね。
襟川 特に女性向けという観点では、恋愛をしたり、キャラクターと触れ合うものはまだそんなにないですよね。ですが、スマホの中にキャラクターがいて、しかもAIでそのキャラクターが人格を持っていて、私だけの彼氏としていつも語りかけてくれたら楽しくないですか? それから、ブランドの企画コンペで出た案ですごくいいなと思ったのが、VR執事ですね! 通販の買い物も全部やってくれたり、すべての家電製品と連携して洗濯機を回してくれたり(笑)。
――キャラクターが“そこにいる”ことが大事なんですよね!
襟川 そうそう! 体温などを感知して、疲れていたら「本日もお疲れ様です」なんて言って頭でもなでてくれたらいいなぁ、と。現実に帰ってきたくなくなるかもしれないですけどね(笑)。
――それでは、今後のルビーパーティーの展開について教えてください! オリジナルの新作を期待しているファンの方も多いかと思いますが……。
襟川 今年2018年の9月には『金色のコルダ』が15周年記念を迎えます。『金色のコルダ3』シリーズのPS Vita版移植を皮切りに、新たな展開も準備中です。詳細の発表はもう少し先になりますので、お待ちください。もうちょっと遠いところでは、発表できないタイトルが水面下でいくつも進行していまして……。
――どのようなタイトルか、概要だけでも伺えますか?
襟川 ざっくり言うと、“ネオロマンスではないタイトル”ですね。恋愛ではない、キャラクター同士の絆を楽しめるタイトルを開発中です。いままでのルビーパーティーとはひと味違う作品になると思います。それから、皆さんから“ネオロマンスの新作を早く出して!”とご要望も頂いているので、そちらも企画しております。
――発表を楽しみにしています。近年では『進撃の巨人』を原作にしたアドベンチャーゲームなど、ネオロマンスゲームのほかにもさまざまなタイトルを開発されていますね。
襟川 『進撃の巨人 死地からの脱出』は、ルビーパーティーブランドが培ってきた“キャラクターを魅力的に見せる”こと、そして重厚なストーリー制作のノウハウを駆使していままでにないアドベンチャーゲームを作ろうということで開発しました。『進撃の巨人』には男性ファンも多いですが、女性ファンが多い作品で恋愛がないタイトルにチャレンジしてみようということで。
――今後の展開でも、ネオロマンスシリーズとそうでない作品の両軸を予定されているのですね。
襟川 『金色のコルダ』や『遙かなる時空の中で』など、大変ご好評を頂いているシリーズの新展開ももちろんありますし、それとネオロマンスではないものとの両軸で動いております。
――ありがとうございます。少しゲーム開発のお話からはそれるのですが……襟川さんが女性向けという観点で、最近「これはスゴい!」と感じたものはありますか?
襟川 女性向けと限定はしていないのですが、ここ最近すごくハマったのが宝塚です。もともとずいぶん前から年に1、2回くらい観に行っていたんですけれども、大ファンというわけではなかったんですね。それがおととし、『るろうに剣心』を観に行った際に、敵役を演じていらっしゃる方がすばらしい歌声だったのと、指先の表現があまりにも美しくて「これはスゴイものと出会ってしまった!」と(笑)。そこからはどっぷり宝塚にハマっております。
――宝塚の男役の方は、まさに“理想の男性”を体現していらっしゃるイメージです。
襟川 声の出しかた、仕草、立ち居振る舞いまで、すべてが女性が憧れる、理想の男性像そのものという感じでキラッキラしているんです! それこそ、劇場に入った瞬間から夢の世界ですよね。2~3時間はずーっとときめきタイムで(笑)。
――宝塚の公演をご覧になっていて、お仕事の参考になることもあるのでしょうか?
襟川 ありますね! 男役さんは“どうやったらかっこよく見えるのか”を体現するプロなので、立ちかた、座りかた、ウィンクなど、どれをとっても“なるほど”と思うことが多く、ムービーやスチルを制作する際の参考にさせて頂いています。
――男役の方は手の動きをとても重視されていると聞いたことがあります。
襟川 そうですね。手の差し出しかたひとつとっても、少し角度をずらすだけでこんなにきれいに見えるんだと感心します。投げキスなんかも、1回タメてから投げる……みたいな(笑)。ダンスのときの手の動きもそれぞれ違うので、自分の好みの動きの方を見つけるのも楽しいですよ。読者の皆さんにも、一度ぜひ観て頂きたいです!
――“理想の男性”というお話にも通じるところですが、最近人気が出るキャラクターの傾向などを感じることはありますか?
襟川 最近、若いスタッフたちに「最近はどんなキャラクターが人気なの?」と聞いたところ「スパダリ(スーパーダーリン)ですよ」と返ってきたのですが、挙げられたキャラクターが私からすると全然スパダリじゃなくて(笑)。「どこがスパダリなの?」と聞くと「このキャラはエリートサラリーマンで、このキャラは生徒会長で、このキャラはめちゃくちゃ強くてハイスペックです」と言われて。でもどのキャラも大きな欠点があるんです。プライベートも仕事もカンペキ、恋愛も“俺にすべて任せろ”的な、完全無欠のハイスペックイケメンがスパダリだと思っていたのですが、表は完璧なのに裏がダメダメだったり、闇を抱えていたり、コンプレックスを持っていたり……“スパダリ”にも二面性があるから魅力的なんだと言われ、「なるほどなぁ」と思いました。
――一見完璧だけれど、内側に弱さがあるキャラクターも“スパダリ”だと。
襟川 二面性、ギャップ、意外性というのは人気のキーワードなのかもしれません。それと、これは女性が強くなったという要因もあるのかもしれないですが、どこかに“かわいいな”と思える部分があるキャラクターも人気がありますね。『ときレス』の霧島司も、ジェントルでカッコイイけれど、ちょっと抜けている部分がありますよね。料理や絵が下手だったりする部分が意外で「カワイイ!」なのだと思います。そういえば、「セクシーなキャラクターは人気だよね」と言ったら、「え?」と返されたこともありました。こっちが「えっ!?」なんですけど(笑)。
――意外です!
襟川 恋愛ゲームなのか、そうじゃないのかというところでも違ってくるんでしょうね。セクシーなキャラクターも、恋愛ゲームで自分が好きになる対象としてはじゅうぶん魅力が伝わるのですが、キャラクター支援的なゲームだと良さがあまり見えないのかもしれません。
――確かに、セクシーは“対私”で効果を発揮する属性ですね。
襟川 恋愛を目的としたゲームで“いいな”と思われるキャラと、それ以外のゲームで人気のキャラは少し違うのかな、と思います。キャラ同士の関係性を楽しむ作品ですと、たとえばドSでクールなキャラはただの意地悪に見えてしまうこともあって、魅力を出しづらいですよね。だけど恋愛対象として見ると、たまらないところがあるじゃないですか。急に冷たい目で蔑まれたり、いじわるばかりしてくる中で、時折ほんの少しの優しさが見える。しかも自分のことが好きになってるようなそぶりでも見せられた日には「よっしゃ、意地でも落とす!」みたいな(笑)。
――乙女ゲームで“これは鉄板!”というキャラクター設定はあるのでしょうか?
襟川 必ず一定の人気を博すのは、少しイジワルで色気があるキャラとカリスマ性のある俺サマです。でもそれも年代別、ゲーム内容別で違いそうなので研究が必要ですね。
――恋愛では強引さもほしいのでしょうか。
襟川 さじ加減は難しいところですが、恋愛なら少し強引なほうがいいと思います。“壁ドン”とか“顎クイ”するくらいの。恋愛ゲームで人気のシチュエーションは、支援型のゲームでは使えないですから、キャラクターの魅力的な見せかたも工夫が必要ですよね。それこそ男の子同士が何かに向かってがんばっているシチュエーションで、“強引に壁ドン”は出てこないですもんね。
――なるほど……貴重なお話ありがとうございます! それでは最後に、B’s-LOG.comの読者の皆さんにメッセージをお願いします。
襟川 いつも応援ありがとうございます。ルビーパーティーはこれからも、皆様の心のビタミンになるようなときめきいっぱいのコンテンツをたくさん生み出していきたいと思っています。これからも応援をよろしくお願いいたします。
【インタビュー】ときめきに大切なのは「恋愛の過程」――ルビーパーティーブランド長・襟川芽衣氏と乙女ゲーム談義☆前編
【4月20日(金)13:30追記】
記事初出時、一部テキストに抜けがありましたため、訂正いたしました。関係者ならびに読者の皆様にご迷惑をおかけいたしましたこと、お詫び申し上げます。