東京凱旋公演＆新作はどうなる!?
人気のスマートフォン用イケメン役者育成ゲーム『A3!』を原作に、2018年6月より東京・京都で上演されたMANKAI STAGE『A3!』～SPRING & SUMMER 2018～。
本作の東京凱旋公演が本日10月26日より開幕することを記念して、『A3!』原作プロデューサー・沖田氏（リベル・エンタテインメント）と、MANKAI STAGE『A3!』演出家・松崎史也氏のスペシャル対談が実現！
東京・京都公演のエピソードからMANKAI STAGE『A3!』にかける想いまで、ロングインタビューでお届けします。
後編では、おふたりが見た春組・夏組の印象、さらには東京凱旋公演・上演が決まっている新作公演への意気込みまで、さまざまなお話を直撃しました！
 |
 |
▼前編はコチラ！
ゲームから抜け出してきたかのようなキャストたち
――松崎さんからご覧になった、春組、夏組は、それぞれどのようなチームですか？
松崎 夏組キャストのほうが平均年齢も高いこともあって、芸達者気味で。不思議なもので、キャストもゲーム内の夏組のように賑やかなんですよ（笑）。もちろん多少意識してしているところもあるのでしょうが、上の3人……天馬（陳内 将さん）、一成（赤澤 燈さん）、三角（本田礼生さん）はお調子者でした（笑）。彼らが賑やかに明るくしてくれていて、幸（宮崎 湧さん）と椋（野口 準さん）がちょっと距離を置いてニコニコしている、みたいな。
 |
 |
 |
 |
 |
――まさにゲームから抜け出してきたかのようです。
松崎 そうですね。幸と椋はふたりともが若かったりキャリアが浅めだったりすることもあって、上の3人が直接アドバイスしたり、あえて見てるだけにしていたり……という感じでした。春はもうちょっとデコボコしていたというか……明確に「ここをこうしようよ」と引っ張る人がいなかったんです。（古谷）大和も、シトロンがああいうキャラクターだから最初からいきなり自分でガンガン回したくなかったと思いますし、真澄（牧島 輝さん）はよくよく話してみるとおもしろいヤツで（笑）。最初はひとりで台本を読んでいたり、端っこでひとりで刀を振ってたり……。で、龍儀がそこに話しかけに行くみたいような感じでした。最初は、「やろうぜ！」という感じではなくて、それぞれがおずおずと「やりたいよね……」という雰囲気だったのが、稽古をしていく過程でグッと固まって行く様子も、春組そのままだなと思いました。
 |
 |
 |
 |
 |
――左京や支配人を始めとする“大人組”も印象的でした。
松崎 めちゃくちゃよかったですね。（左京役の）藤田玲くんと（鹿島雄三役の）滝口（幸広）くんに関しては舞台を観たりしていたので、任せて大丈夫だろうと思っていましたし、積極的に意見もしてくれますし。（田内季宇さん演じる）迫田なんかは、ああいうポジションのキャラクターって舞台だとすごく助かるから愛されやすいんですよ。
 |
春組・夏組の印象的なシーンは？
――おふたりが個人的にお気に入りだったり、印象的なシーンをお伺いしたいと思います。まずは春組ですが……。
沖田 春組で感無量だったのは、舞台の上で寝るシーンです。本当にやりたかったので！
松崎 最高ですよね！ 「舞台で寝ちゃうんだ!?」って。
沖田 本当にすごいです。あのシーンはとある旅役者のドキュメンタリーを参考にしてゲームに取り入れたのですが、それを実際の舞台で観られたのが本当にうれしくて！ しかもそこを、至のエピソードなどが詰まっている大事なシーンにしてくださったので、その前後も含めて本当に好きでした。短い1シーンの中で、いろいろな感情が動かされるシーンだったと思います。
――松崎さんは、どのような意図で演出されていたのでしょうか？
松崎 諸々を考えたら省略しがちなところですが、とにかく「絶対に敷布団は出します」と（笑）。あのタイミングで布団を持ち出して劇場に寝に行く咲也はかなり変わっていますし、「しかもそこに全員を集めるんだ！」という。これはもう生でやるしかないと思いました（笑）。
――それでは、夏組の印象的なシーンというのは？
沖田 天馬のピンチを夏組それぞれが支えようとするシーンがものすごく好きでした。ひとりで練習している天馬のところに幸やみんなが入っていくシーンは、厳密には原作にはないシーンなんです。ひとりで芝居をしている天馬に「ひとりじゃないよ」とセリフで入っていくのがグッときますし、そのあとの一成が考えた円陣を組むところは……ゲームの画面では表現しきれない、舞台ならではのシーンですよね。すごく素敵だなと思いました。
 |
――松崎さんのお気に入りシーンはどこでしょうか？
松崎 全部ということになっちゃいますが……超個人的には、「空っぽだった劇場が、人の熱気で……」という冒頭のシーンが、ゲームでもすごく好きで、最初の咲也のモノローグに、演劇に臨む俳優の大事なものが凝縮されているな、と。“人の熱気でじわじわと温まってくる”って本当にそうですし。空の舞台に咲也が降りてきて、客席を眺めながら言うモノローグがすごく好きでしたね。実際は満席の客席なのも、いろんな未来とつながっていて素敵でした。
――まさに『A3!』の世界にグッと引き込まれるようなオープニングでした。それでは、松崎さんからご覧になった『A3!』の魅力というのは？
松崎 沖田さんは舞台化されることで気づきがあったとおっしゃってくれましたが、それらは本当は最初からゲームに内包されていると思います。僕は仕事柄、個人的に監督や綴に感情移入していました。日々役者を見ているから書ける言葉があったり、「いま彼は調子がよくないんじゃないか」、「今日の本番はここからよくなった」と感じていたり……。そういうところも含めて、ふつう、ゲームでは初日から千秋楽の間は描かないと思うし、公演中に調子が悪くなったり、事件が起きたりしないと思うんです。ふつうは“幕が開くまで”が物語のゴールに設定される。でも『A3!』では、彼らがトラブルをどう乗り越えるかとか、“幕が開いてから”の演劇も全肯定してくれるんですよね。
――先ほど稽古にはドラマがあるとおっしゃっていましたが、本番中にもドラマがあるわけですね。
松崎 ミスやトラブルって、やっぱりあるんです。でもそれは見せちゃいけないところで。一方、人が演じているからには、“失敗する可能性があるところを成功しているのがおもしろい”というのも演劇だったりして……。そういう演劇の努力も結果も、すべてに対して愛を持って描いてくれているので、「なんでこんなに演劇のことをわかっているんだろう？」と不思議だったんですよね。イラストだけ見ると「こんなにキラキラした人ばかりじゃないから！」とも思っていたのですが（笑）、のっけからライバル劇団のキャラクターが「役者って全然食えないからみんなバイトとかしてるんだよ」と言ったときは、「その世知辛さをもう出すの!?」って（笑）。
――そこでいきなり、これはただのキラキラした物語ではない、と。
松崎 沖田さんたちとお会いしたときに、その辺を率直に聞かせてもらったら、皆さんすごく演劇に造詣が深いことを知って腑に落ちました。そこで「こんなに演劇を好きな方々が作ってくださってるならば、できる限りの全力で応えたいな」と思いました。演劇として恩返しをしたいなと。
沖田 そう言って頂けるのは本当にうれしいです。演劇を好きになってほしいという想いで作った作品だったので、今回の舞台化でも、観て頂けた方々により演劇を好きになって頂きたくて。「初めて観た舞台が『MANKAI STAGE』でよかった」というようなご感想も頂けているので、本当に舞台化してよかったと思いますし、ひとつの念願が叶った気持ちです。
「幕が上がる高揚感を劇場で味わって」
――いよいよ10月からは、東京凱旋公演が始まります。
松崎 凱旋公演については基本的にはいままでと同じものを観て頂きたいです。まだご覧になっていない方やすでに映像で観ている方は楽しみにして頂きたいですし、東京・京都でご覧頂けた方には「ただいま」と言えます。ですが俳優からすると、7月に京都で終わって10月に凱旋公演をやる間に、人生として3ヵ月過ごしていますから、当然演技に対する温度や技術は細かく変わってくるんですね。それを変えないようにするのも役者ですし、3ヵ月が経った違和感に対して自然であろうとするのも役者です。なので、また生まれ変わったナマの彼らが『A3!』をやるというところは、楽しみにしていてほしいです。
――まさに、ナマの役者が演じるナマの舞台ならではの楽しみがある、と。
松崎 出来上がったものをくり返し観て頂くなら、絶対に映像作品のほうがいいんです。でも演劇は、今日客席に出て行って、今日戦う。“今日は今日の演劇”がいいと思って演劇をやっているので、恐れず、積極的に変化を楽しんでいきたいと思っています。『A3!』ではそういう役者の変化も丁寧に描かれていますし、理解して頂けるかなと。
――そして2019年1月からは、秋組・冬組のフィーチャーした新作公演も決まっていますが、どのような作品にしよう、という展望はありますか？
松崎 “どのような作品にしたい”と訊かれると、その答えは「ありながら、ない」という禅問答のような答えになってしまいますね。「こういう方向にしよう」とルールを作るといくつか大事なものが損なわれていきますし。『SPRING & SUMMER 2018』の顔合わせでも、「どういう作品になるのかまだわかりません」と言いました。「ただ、確実にすごくおもしろいものにしましょう」と。作り手と受け手、関わる全員にとって意味のある素晴らしいものにしたいという想いはいつもありますが、“こんな作品にしたい”と即答できる考えかたはしていません。
――稽古をするなかで作り上げていく、ということですね。
松崎 『SPRING & SUMMER 2018』で言うと、春組・夏組ともに出会いがあって稽古があって劇中劇があるという展開でしたが、その形式を踏襲するかどうかも含め、変化し続けていたほうがいいな、と。MANKAIカンパニーの彼らも“変化しない”選択肢は選ばないと思いますし、お客さんが「つぎもああいう形ね」と構えている中で同じものをやるわけには行かないし……。そういうことを考えながら、役者といっしょに作ったものを観て頂くのが『MANKAI STAGE』だと思います。それ自体を体験しにきてもらえたらうれしいです。
――「確実にすごくおもしろいものにしましょう」というところに関しては……？
松崎 それはお約束できます！
――楽しみにしています！ それでは最後に、これから『MANKAI STAGE』をご覧になる方に向けて、沖田さんからメッセージをお願いいたします！
沖田 劇場に行くと、舞台にしかない、その日その公演でしか観られない“かけがえのないもの”を観させてもらえている、ということを体感できます！ その瞬間にしかないものを観に行って頂きたいですし、幕が上がる高揚感を、ぜひ実際に劇場に足を運んで味わって頂けるとうれしいです。
▼前編はコチラ！
公演概要
【公演タイトル】MANKAI STAGE『A3!』～SPRING & SUMMER 2018～
【期間・劇場】
東京公演（天王洲 銀河劇場）：2018年6月28日（木）～7月8日（日）
京都公演（京都劇場）：2018年7月13日（金）～7月16日（月・祝）
東京凱旋公演（天王洲 銀河劇場）：2018年10月26日（金）～11月4日（日）
【原作】イケメン役者育成ゲーム『A3!』
【演出】松崎史也
【脚本】亀田真二郎（東京パチプロデュース）
【音楽】Yu（vague）
【振付】梅棒
【キャスト】
＜春組＞
佐久間咲也：横田龍儀
碓氷真澄：牧島 輝
皆木 綴：前川優希
茅ヶ崎 至：立石俊樹
シトロン：古谷大和
＜夏組＞
皇 天馬：陳内 将
瑠璃川 幸：宮崎 湧
向坂 椋：野口 準
斑鳩三角：本田礼生
三好一成：赤澤 燈
鹿島雄三：滝口幸広
松川伊助：田口 涼
迫田ケン：田内季宇
古市左京：藤田 玲
【協力】一般社団法人日本2.5次元ミュージカル協会
【主催】MANKAI STAGE『A3!』製作委員会（ネルケプランニング、ポニーキャニオン、リベル・エンタテインメント）
(C)Liber Entertainment Inc. All Rights Reserved.
(C)MANKAI STAGE『A3!』製作委員会2018
