記者会見で著書にこめた想いを直撃!

声優としてさまざまなアニメ、ゲームなどで活躍中の梶裕貴さんが、14歳で“声優”を目指してからいまに至るまでの、夢と仕事に対する想いを綴った著書『いつかすべてが君の力になる』が、発売から2週間で発行部数4万部を突破しました。

本作の発売(2018年5月10日)を記念して、5月17日に都内で行われたお渡し会イベント直前の記者会見では、梶さんの口から本書に込めた想いが語られました。

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――執筆の感想を教えてください。

 執筆は初めての体験でしたし、当然同時に声優の仕事もやりつつだったので、ひとつの文章を最後まで書ききることは本当に難しかったです。自分の名前で本を出させて頂く以上、僕自身も妥協したくないという思いもあり、納得のいくものに仕上げる作業は、とても大変でした。だからこそ、こうして実際に“書籍”として形になったものを手にしたときは、すごくうれしかったですね。本にも書かせて頂きましたが、“あきらめないこと”、“苦しくても最後までやりきること”の達成感がありました。

――本を書いたことで、自分自身に新たな発見はありましたか?

 書いているときは、繕っても仕方がないという部分と、それでもなるべくきれいな形で文章にする、ということの両方のハードルを感じていました。けれど、いざできあがったものをみると、自分以外の何者でもないなと(笑)。伝えたい”という想いは、文字にも出るんだなと思いました。そこは普段、役者の自分が持っているカラーと、どこかしら繋がっている気がします。読んでくださったみなさんからも、「梶らしい熱とエネルギーを感じる」というお言葉を頂きました。何を届けられるかは人によって違うと思いますが、僕はお芝居と同じように“想いの強さ”がにじみ出てしまうんだろうなと感じました。

――読者の背中を押す熱い想いがつまった1冊ですが、梶さん自身が支えられていると感じるものは?

 やっぱり応援してくださっている皆さんですね。僕はつねづね、何かを表現したい、届けたいと思っていますが、それは受け取ってくださる方がいるからこそ、楽しい・うれしいと感じることができるんです。僕個人というよりも役者として、作品やキャラクターを通して何が届けられるか。それが伝わったときが、本当にうれしいんです。視聴者の方はもちろん、作品のスタッフさんをはじめ事務所のスタッフさんなど、「誰かの役に立ちたい」という想いがあるんです。「梶の声・梶の芝居があってよかった」と言って頂けることが、なにより僕の支えです。

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――特にどんな人に読んでほしい本ですか?

 今回は、14歳に向けたシリーズということで書かせて頂きました。僕も声優になりたいと思ったのが14歳でしたし、いまの自分だからこそ伝えられるものがあるのでは? とも思ったからです。これがもし本格的な教則本や声優人生を語る内容だったら、お引き受けできていなかったかなと思います。なので、もちろん幅広く大人の方々にも読んで頂きたい気持ちもありますが、いちばんは中高生を中心に、夢を追いかけてがんばっている子たちや、夢を探している子たちに僕の想いを受け取ってもらえたらうれしいなと思います。

――執筆にあたり、声優人生をどのように振り返りましたか?

 誰しもいろいろな苦労があって、その時間の質や量、種類も人それぞれだと思います。自分が身をもって体験したこと――声優を目指すことの楽しさや苦しさを届けなければ、意味がないと思いました。声優になるためのルートやお芝居の技術といった具体的なことよりも、自分がどう感じてきたのか、どういう気持ちで挑戦し続けたらいいのかという“気持ちの部分”を感じて頂くことのほうが大事なのかなと思います。この本は、“声優”という仕事がベースにありつつも、“14歳の彼らがどう過ごしたら、その後の人生を豊かに過ごしていけるか”をイメージして書かせて頂きました。多感な年頃ですし、大人になってから考えれば些細なことでも、すごく重大な問題として抱えてしまっている子たちもいるかと思います。そういった子たちにとって、なにかしらの救いになれたらと思います。

――書くのが難しかったところ、楽しかったところはどこですか?

 自分の気持ちの部分に関しては、実際に思ったこと、経験したことなのですんなり書くことができました。難しかったのは、声優業界のしくみやルールですね。一概に言えないことや、文章ではなかなか伝わりにくいことだったりもするので、現実的・物理的に難しかったです。最後の章を書いているときは、「もう少しで終わる!」という安心感がありました(笑)。執筆中は「本当に終わらないんじゃないか……10年後くらいに完成になるんじゃないか……」という気持ちがあったんです。「遊んでる暇があるんだったら本を書けよ!」っていう意識が常にあって苦しかったので、終わったときはホッとしました! そこからさらに修正作業が5~6往復あったんですけどね(笑)。でもこうしてできあがって、みなさんに直接お渡しできる機会が、なによりうれしいです。

――本書には三間音響監督のインタビューも掲載されていますが、お読みになっていかがでしたか?

 とてもお世話になっている恩師の三間音響監督に寄稿して頂けたことは、個人的にとてもうれしいことでした。僕が現場で三間さんから感じている印象と変わらず、厳しい面もありながら、熱意と愛情を持ってお仕事に取り組まれている方だなと改めて感じました。音響監督さんのお言葉は、一般の方にはなかなか届きにくいものだと思います。また違った角度から“声優”という職業に触れて頂けたと思うので、とてもありがたい内容でした。

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――店頭に本が並んでいる様子は見られましたか?

 僕、まだ本屋さんに行けてないんです。でも並んでいるのを見たらうれしいだろうな、と。いままでも表紙をやらせて頂いた雑誌などが並んでいるのを見かけて、気持ちがざわざわした経験はあるのですが(笑)、今回も自分の顔が表紙ですし、“著者・梶裕貴”というところで歯痒かったりもするのかな……? ちなみに本の表紙のデザインは、僕が提案したわけではないのですが、きっとこうなるだろうなって思いました(笑)。「声優ってなんだろう? どういう人が書いてるんだろう?」と思う方も多いでしょうから、一発でわかって頂ける表紙になったのかなと思います。

――本のなかでは、思春期の頃のお父さんとのエピソードが掲載されていますが、いまお父さんに伝えたいことは?

 本を渡そうと思ったら、もう購入してくれていました(笑)。最近はなかなか実家に帰れていないのですが、改めて直接手渡して、父とのエピソードのことも話せたらいいですね。僕は声優ですから、基本的にはなかなか本を出版させて頂く機会なんてありません。なので、これもひとつの親孝行になっていたらうれしいですね。

――本書に登場する“究極の選択”にちなんで、最近あった究極の選択といえば?

 ……晩ご飯を食べた後に甘いものを食べるかどうか、ですかね(笑)。ひとつご褒美があると「今日も1日がんばったな」って眠れそうじゃないですか。でも遅い時間に糖質を摂るって罪なことなので、毎日悩んでます。でも、大体食べちゃいます(笑)。

――今後はどんなメディアで表現してみたいですか?

 自分の10代・20代・30代を振り返ってみて改めて感じましたが、やればやるほど「声優でよかった」と思うんです。やっと少しずつ声優が向いていたんだなと思えてきました。こうして活動できているのはみなさんのおかげなので、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。今後も声優の仕事を軸に、機会があるならば、文章なのか絵なのか写真なのか……いろいろなことに挑戦して、それを声の芝居にフィードバックしていけたらと思っています。

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『いつかすべてが君の力になる』商品概要

【発行元】河出書房新社
【著者】梶裕貴
【発売日】発売中(2018年5月10日)
【定価】1404円[税込]
【単行本】188ページ

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