楽曲制作にかけるアツい想いを直撃

“裏側を知ればもっと好きになる!”をテーマに、人気作を生み出すクリエイター陣に直撃するインタビュー企画、“クリエイターTouch”が始動!

記念すべき第1回は、Happy Elements K.K(以下、Happy Elements)のアイドル育成ゲーム『あんさんぶるスターズ!』におけるユニットソングを手掛ける、音楽プロデューサーの桑原聖氏(Arte Refact)に、『あんスタ!』やこれまで制作してきたユニットソングへの想いを訊きました。

『あんスタ!』ユニットソングCDは、2015年10月より1stシーズン、2016年9月より2ndシーズン、2017年8月より3rdシーズンがリリースされ、現在は各ユニットのアルバムシリーズが発売中。

これらに収録されている楽曲は、3Dライブ“あんさんぶるスターズ!DREAM LIVE”、声優陣によるライブ“あんさんぶるスターズ!Starry Stage”などでも披露されています。

前編に続き、後編ではとくに印象に残っている楽曲や3Dライブ、声優ライブ、舞台『あんさんぶるスターズ!オン・ステージ』のお話まで、さらにディープなインタビューをお届けします☆

▼前編はコチラ!

(修正後)桑原様お写真
▲桑原聖氏(Arte Refact)
Arte Refact代表兼プロデューサー。2011年にArte Refactを発足後、数々のアニメ・ゲーム楽曲や、アーティストのプロデュースを手掛けています。

3rdシングルで見せたかったのは“ひと皮剥けたトリスタ”

――これまで数多くの『あんスタ!』楽曲を制作されてきたなかでも、とくに印象的な楽曲はありますか?

桑原 いろいろありますが……、1stシーズンを除くと、Trickstarの『BREAKTHROUGH!』ですかね。じつは当初はM2(2曲目)の予定だったんです。『DIAMOND SUMMER』がTrickstarらしい曲なので、こちらがM1(1曲目)のつもりで作っていました。でも、明るくてポジティブなTrickstarだけではなく、違う一面やひと皮むけた彼らを見せたいなと思って『BREAKTHROUGH!』をM1にしたいと提案したんです。どちらも大切な楽曲ですが、印象はどうしても1曲目のほうが強いじゃないですか。なので、あえて『BREAKTHROUGH!』を1曲目に持っていきたいと。

――確かに、いままでのTrickstarとは違い、戦っている印象の楽曲ですね。
桑原 “いままでのTrickstarだと太刀打ちできない敵がいる”というところを音楽でも見せたかったんです。Eve、Adam、Edenとライバルに挑んでいくには、“いつものTrickstar”ではないほうがいいと思い、『BREAKTHROUGH!』を1曲目に推しました。

――ほかにも印象に残っている曲はありますか?
桑原 2winkの『TRICK with TREAT!!』ですね。自分が曲を書かせて頂いたというのもありますが、初めて“斉藤さん”と“壮馬さん”以外の方に歌ってもらえたのでよかったなぁと(笑)。斉藤さんはずっとおひとりで寂しそうだったので、やっと叶えてあげられました。

――『TRICK with TREAT!!』にはUNDEADのコーラスやセリフが入っていましたよね。UNDEADといえば、やはり旧ユニットであるデッドマンズの楽曲を待っているファンも多かったのではと思います。

桑原 デッドマンズの『Death Game Holic』ですね。このCDのときは、デッドマンズの曲を先行して制作していたので、UNDEADの楽曲を作るのが非常に難しかったんです。UNDEADは2ndシーズンの楽曲がわりと明るめな曲だったので、3rdではもっと背徳的な部分を見せたいと考えていたのですが、一方でデッドマンズより行きすぎてはいけないという制約があって。『Gate of the Abyss』は僕が作曲をした曲ではあるのですが、じつはコンペで選んで頂いた曲なんですよ。コンペをした結果、Happy Elementsさんにこの曲を選んで頂きました。

――『あんスタ!』ユニットソングシリーズのなかで、「ふつうに聞くとわからないかもしれないけど、じつは……」という“玄人向け”なこだわりはありますか?

桑原 音質的なところでいうと、できるだけいいものをお届けしたいので、すべてハイレゾ音質に対応した状態で作っているんですよ。一般的なCDの音質よりも圧倒的にいい状態で制作しています。CDに落とし込むと、ハイレゾ対応ではなくなってしまうんですけど……。それから、2ndシーズンくらいまではユニットの生い立ちや立場を鑑みて、“ここは豪華にしていい、しないほうがいい”という線引きが自分のなかでありました。

――……と、言いますと?

桑原 fineは「弦楽器は絶対に生音で録りましょう!」と(笑)。Valkyrieもアーティストですから当然生音で録りますし、紅月も和楽器を生音で録っています。逆に、2winkは生系の音は極力入れていません。Ra*bitsも初心者ユニットということもあって、うまいミュージシャンが演奏してはいますが、当初はあまり生音を多用しないようにしていました。

3Dライブや声優ライブ、『あんステ』の制作秘話

――『あんスタ!』ユニットソングは、3Dライブ“DREAM LIVE”(スタライ)、声優さんによるライブ“Starry Stage”(スタステ)と、さまざまな形で披露されています。それぞれのお話もうかがえますか?

桑原 “スタライ”については、僕から「生演奏にしたい!」と提案させて頂きました。3Dライブはキャラクターの動きが毎回変わるわけではないので、生バンドを入れることで、よりキャラクターが生きている感じがするのではないかなと。楽曲のバンドアレンジの監修や、バンドメンバーの手配もしましたね。12月31日の公演だけは、どうしてもメンバーの都合がつかなくて僕もステージにも立ちました(笑)。

――“スタライ”を実際にご覧になっていかがでした?

桑原 単純に「すごい時代だな!」と思いました。“小並感”で申し訳ないんですけど(笑)。ファンの皆さんがライブを望んでくださっているのを肌で感じることができたいい機会でした。新しいことに挑戦させて頂いている実感や、ありがたみも感じましたね。

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(C)2018 Happy Elements K.K/スタライ製作委員会

――では“スタステ”について教えてください。

桑原 こちらは企画から関わらせて頂きました。そもそも、「声優さんのライブをやりたい!」と言い出したのは僕だったんです。2年越しくらいで企画が通りまして、“スタステ”という名称から提案させて頂きました。実際に何の略かはまだわかりませんが、ゲーム内に出てくる『SS』という言葉を、僕は“Starry Stage”なのかなと思って。“スタステ”では、キャスティングや演出など、制作統括という形で入らせてもらっています。本当にいろいろなことをやらせて頂きました!

――“スタステ”を実際にご覧になっていかがでした?

桑原 いやー、もう本当に感動しましたし、「やっとこの景色が見られた!」という思いが強かったです。ですが、それ以上に自分の力不足や至らない部分も浮き彫りになりました(苦笑)。ライブをやるまでにファンの方々を3年お待たせしてしまったので、“スタステ”では“できるだけ皆さんの近くに行く”というコンセプトがあったんです。なので、全員が必ずトロッコに乗る、必ず(会場後方の)サブステージに行く、ということをやりたくて。そこはクリアできたかなと思うのですが、13人のキャストさんが出演してくださったなかで、キャストさんが歌って踊るアイドルコンテンツのライブが初めてだという方が半分以上いて。そこでいきなり「ハードなダンスを覚えてください」というのも難しいですし、できるだけ最善を尽くしました。そういった苦労もあったので、実際に観るとやっぱり感動しましたね。

――“スタライ”は第2弾が決定していますが、“スタステ”についてはいかがでしょうか?
桑原 公演タイトルに“1st”とついているということは、つまり、そういうことですよね(笑)? やっていきたいなという気持ちはあります!

――Arte Refactの皆さんは舞台版『あんさんぶるスターズ!オン・ステージ』の楽曲も制作されています。いわゆるCD向け音源と、舞台で歌われることを前提にした楽曲では、制作方法に違いはあるのでしょうか?

桑原 『あんステ』では、基本的には脚本が届いて「こういう楽曲がほしい」という発注を頂きます。『あんステ』はメインストーリーのお話が描かれていたのですが、その頃の曲はだいたい『あんスタ!』のユニットソングで作ってしまっていたので難しかったです。ただ、シーンの細かい部分を切り取って、違う角度から見たときに、このユニットはこういう曲を歌っているべきだ、こういうシーンに合う曲はこうだろう……といった感じで、いろんな楽曲を出させて頂きました。やっていることは同じですが“角度の違う曲”を作りました。

――『反逆!王の騎行』をモチーフにした『あんさんぶるスターズ!エクストラ・ステージ』~Judge of Knights~では、【ジャッジメント】のライブシーンで新曲も多数披露されていました。

桑原 【ジャッジメント】ではバトルが展開していくので「メドレーでこういう曲を作ってください」と発注がありました。その時点では脚本が完成していなかったので「どうなるんだろう?」と思いましたが、完成したものを読ませて頂くと「なるほどな」と。「しゃべっているシーンはどうなるんですか? 止めたらメドレーになりませんよね?」と聞いたところ、「踊っているような演出になります」と言われたので、じゃあバックミュージックを流しておいて、歌に復帰できるような作りにしよう、と。

――お芝居や歌が入ること前提の作りになっていたのですね。

桑原 それから、やはり役者さんもそのときどきによって言葉の呼吸が変わるじゃないですか。そうするとタイム感が変わるので、「必ずこの尺で」という作りかたはできないんですよね。なので、歌がある部分は決まった尺ですが、それ以外の部分は(遅れても取り戻せるように)ループするように作っています。こちら側からの提案として、バトルはだんだん加速していくものなので、曲のほうも少しずつBPM(テンポ)が上がっていくようにしました。観客が「速くなったな」と極端に感じないように、少しずつテンポを上げていって。

――やはり、舞台で歌われること前提で作られているんですね。

桑原 曲中にセリフが入る場合は、自分でもひと通りセリフを読んで「このキャラクターならこのタイム感で読むな。だったらこれくらい尺が必要だな」と考えます。

――『あんステ』もご覧になっているのですか?

桑原 もちろん全部見ています。どの作品も、どのキャラクターも本当にすごくいいのですが、僕は個人的に天祥院英智役の前山(剛久)さんが大好きで! 「英智様の曲を書かせてくれてありがとう! 最高です!」という気持ちです(笑)。

キャラソンの極意は「不自然ではないもの」

――キャラクターソングといわれるもの全般についてお話を伺いたいです。いわゆるキャラクターソングやユニットソングを作るときに“ここだけは外せない”というポイントはありますか?

桑原 言葉では説明しづらいのですが、僕自身は『あんスタ!』の曲を“キャラクターソング”だとは思っていません。本当にアイドルをプロデュースしている感覚、実際のアイドルの曲だと思って作っています。ですが“キャラクターソング”という観点であれば、“その世界のそのキャラクターが歌っていて不自然ではないもの”でしょうか。曲からその世界やそのキャラクターが想像できるものを作りたいと考えています。その世界とキャラクター自身にマッチしていること、違和感がないことですね。たとえば、牧歌的なアニメなのに、デジタルな曲が鳴っていると違和感があるじゃないですか? でも、そのアニメのなかにゲームが好きなキャラクターがいるのなら、デジタルな音楽を取り入れていても別に不思議じゃない。そういう切り分けは考えます。

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――実際のアーティストさんに曲を書かれるときと、あまり意識の違いはないのでしょうか。

桑原 ないですね。ただ僕は、アーティストさんの楽曲提供やプロデュースをさせて頂くときには、その人に歌詞を書いてほしい、という条件を出させて頂くことが多いです。どうしても難しかったり、タイアップがついている場合などは作詞家さんが入る場合もあるのですが、そうでない限りは、歌うご本人に歌詞を書いてもらいたい。じゃないと曲が伝わらないと思うんです。ご本人以外の言葉で作られた歌詞で歌うと、どうしても“ちょっと違う”部分があるんじゃないかなって。少しでもご本人の想いが乗っている曲にしたいので、できるだけ作詞はしてもらいたいなと考えています。

――最後に、今後の作品を楽しみにしている読者へ“桑原プロデュース曲のここを聴いてほしい!”というところを教えてください。
桑原 僕は音楽って生きているものだなと思っていて、同じメロディー・同じ歌詞でも、1番、2番という時間を経て、3番になったときには感情が変化していると思うんです。そういった歌の違いや、同じメロディーでもバックのオケが変わるところを楽しんで、“こういう風に世界が変わったんだ!”と注目して聴いて頂けたらうれしいです。『あんスタ!』のユニットソングでは、1曲のなかで生演奏だからこその変化をつけたり、生演奏でない曲も少し楽器を足したり、動きかたを変えたりというような作りをしているので、“聞いているとちょっとずつ違う”という楽しみかたができると思います。メロディーだけではく、ひとつひとつのパーツにもこだわって作っていますので、そういうところに耳を向けて頂けたらと思います。シングルに収録されているカラオケバージョンもぜひ聴いてほしいです!

▼前編はコチラ!

あんさんぶるスターズ!アルバムシリーズ 第3弾 Knights

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【発売日】発売中(2018年5月30日)
【価格】初回限定生産盤:5400円[税込]/通常盤:3240円[税込]
【初回限定生産盤】キャラクターコメンタリーCDが付いた2枚組。さらに、アクリルスタンド&アルバムブックを同梱した豪華BOX仕様。

【CAST】
Knights:月永レオ(CV:浅沼晋太郎)、瀬名 泉(CV:伊藤マサミ)、朔間凛月(CV:山下大輝)、鳴上 嵐(CV:北村 諒)、朱桜 司(CV:土田玲央)

【収録内容】
01.『Voice of Sword』
作詞:Mel* 作曲:矢鴇つかさ(Arte Refact) 編曲:矢鴇つかさ & 酒井拓也(Arte Refact)

02.『Checkmate Knights』
作詞:Mel* 作曲:桑原 聖(Arte Refact) 編曲:酒井拓也(Arte Refact)

03.『Silent Oath』
作詞:松井洋平 作曲/編曲:山木隆一郎

04.『Fight for Judge』
作詞:松井洋平 作曲/編曲:Dr. Lilcom

05.『Crush of Judgment』(ナイトキラーズ・BONUS TRACK)
歌:ナイトキラーズ:月永レオ(CV:浅沼晋太郎)、天祥院英智(CV:緑川 光)、鬼龍紅郎(CV:神尾晋一郎)、仁兎なずな(CV:米内佑希)
作詞:Mio Aoyama 作曲/編曲:加藤裕介

06.『Article of Faith』
作詞:松井洋平 作曲/編曲:日比野裕史

07.『Knights the Phantom Thief』
作詞:こだまさおり 作曲:光増ハジメ 編曲:脇 眞富(Arte Refact)

08.『Grateful allegiance』
作詞:松井洋平 作曲/編曲:SHOW & Dirty Orange (Digz, Inc. Group)

09.『Birthday of Music!』(月永レオ Solo)
作詞:松井洋平 作曲/編曲:白戸佑輔

10.『Ironic Blue』(瀬名 泉 Solo)
作詞:磯谷佳江 作曲/編曲:山木隆一郎

11.『真夜中のノクターン』(朔間凛月 Solo)
作詞:こだまさおり 作曲/編曲:本多友紀(Arte Refact)

12.『JEWEL STONE』(鳴上 嵐 Solo)
作詞:Mio Aoyama 作曲:藤末 樹 編曲:酒井拓也(Arte Refact)

13.『With My Honesty』(朱桜 司 Solo)
作詞:こだまさおり 作曲:中野ゆう 編曲:遠藤直弥&中野ゆう

(C)2014 Happy Elements K.K